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こんにちは。修士1年の勅使河原です。最近さらに冷え込んで来ましたね。ししいわ荘の窓から朝霧に覆われた街を見ていると、不思議と目が冴えてきます。
さて先日、安曇野の方で現地調査へ行ってきました。
佐倉研究室では今年度から、安曇野ビルディング・県設計さんと協働で、「エルサ安曇野SC計画」を進めています。
このプロジェクトでの佐倉研究室の役割として、ミクロとマクロ両義の観点でのまちづくりの視点から、新たな郊外型商業施設の在り方を検討し、エルサ安曇野におけるモデル提示を今年度中に行うことが目標です。
これまでにショッピングセンターについて3つの先進事例を見ていましたが、その一方で安曇野の現地で聞き込みをすることはしていませんでした。今回は特産品を通して安曇野についてより深く知るため、2日間のヒアリングを行いました!
安曇野は松本市の隣にあり、四方を高いアルプスの山々に囲まれた南北に長い盆地に広がる町です。四方の山から川がいくつも流れ込みいくつもの扇状地が広がるこの盆地の中では、2000以上の農畜産業者があります。質な水や気候風土に恵まれた場所であり、特にワサビに関しては日本1の生産量を誇ります。その豊かな環境に惹かれて移住・就農をする人も見られます。
1日目の聞き込みでは、味噌蔵の畠山醸造、トマト農園のナチュベリーズ、建築設計事務所のMIGRANTに話を伺いました。
広大な安曇野ですが、味噌作りを続ける業者は現在3社と多くはありません。そのうちの一つである畠山醸造でお話をうかがいました。畠山醸造では、自然の変化に合わせた味噌作りが行われていました。味噌は春先に仕込みをして、夏に発酵を進ませ、冬までに熟成を繰り返すことで作られるので季節によって味が違います。また1年、2年と年を越すごとに味も変化していくそうです。今日の味噌の多くは味が1年を通して変わらないのですが、畠山醸造の味噌には1年を通した味の変化を楽しむ魅力があります。
また、材料である大豆を同じ畑で作り続けると、背の高い雑草が増えていき豆の育ちが悪くなるそうです。そのために大豆を3年作った後は水田にすることで畑を休ませるという工夫をしていました。
畠山さんは安曇野での暮らしについて常に山の存在を感じていて一体感を持っていると語ってくださりましたが、そのような自然に対する謙虚さが味噌作りにも表れているのを感じました。
外資系のマーケティングから安曇野で就農した降旗文郎さんのナチュベリーズでもお話を伺うことが出来ました。
以前の仕事で施設開発やブランディングに関わっていた降旗さんは、食や農の問題について強い関心をもって農業に取り組んでいます。降旗さんは、食とは本来日本人としてのアイデンティティを感じさせてくれるものであり、農業での土とのふれあいの中で育むことの出来るものであるという食の魅力を語ってくださいました。
現在の日本では農薬を使った農業はどこでも行われていますが、このような方法で育てられた作物は健康面での影響だけでなく日本人ならではの食に対する感性を軽視しがちです。そこで降旗さんは製品としての価値だけではない食の魅力を広めるため、有機農法を用いたトマトの栽培を行っています。通常の物より収量は少ないですが自然にある物だけを用いて害虫対策や土壌の改善を行っているために安心感があり、味もとても甘く、美味しくなるのが特徴です。
また完全な有機農業を行うにあたって、自作で肥料を作る、リモートでつながった農家同士で情報交換を行って作り方を勉強するなど近代的な方法も生かした工夫をしていました。食からライフスタイルの再考を真剣に考え、非常に広い視野を持って取り組んでいることが感じられるインタビューでした。
MIGRANTは東京から安曇野に移住した寺田和彦さんと小穴真弓さんによる建築設計事務所です。安曇野では設計の他シェアハウスや民泊の運営を行っています。今回は寺田さん特製の昼ご飯を一緒にいただきながら、安曇野についてのお話を伺うことが出来ました。
以前は都内の建築設計事務所で働いていましたが、2019年の夏から安曇野へ移住しています。鶏5羽とアヒル1羽を飼っており、鳥小屋を地域の人と作るワークショップなども行っています。鳥たちを介して地域の人とかかわる一方で、シェアハウスや民泊にやってくる異なる職業の人とつながる事も出来ます。豊かな自然の中に居ながら利便性もある生活が出来るのは、安曇野ならではの暮らし方であると言えそうです。
また、安曇野市はもともと5つの村に分かれており、それぞれの地域で異なる特産品が作られているという事も教えていただきました。特に豊科や明科では質の高い玉ねぎ栽培を行っており、毎年6月には畑で玉ねぎを収穫し、格安で買う事もできます。今後の提案でもこういった地域ごとの特徴を生かした提案をしていきたいですね。
次回は2日目の安曇野調査について紹介します!