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阪神・淡路大震災によって生じた空き地をベトナム人の交流の場に!

都市空間デザイン

現地で多文化共生ガーデンの発起人の一人、角野史和氏(合同会社こと・デザイン代表)へのインタビューを行った。インタビュー内容から都市計画的視点(点・線・面)で語られた部分を抜粋し記述したい。

◯点
阪神・淡路大震災によって崩壊した家屋の跡地の中でも、再建できない立地条件にある空き地を活用するこの地区ならではの歴史的背景を活かしたコミュニティーガーデンだ。
他にも多数残存する空き地の中から、この場所を選んだ理由が興味深い。当初、手入れされず荒れた状態になっていた空き地を再生したいとの理由から、所有者を特定し直接相談していたが、断られ続けた。当該対象地は、空き地の状態が数年間続いていたが、所有者が空き地に思い入れがあり、毎年自身で手入れしていた経緯を持つ。毎年の維持管理が大変だったこと、愛着はあるが利用できていない空き地を地域のために利用してもらえるのなら嬉しい、との理由から契約に至った。荒廃している空き地の再生の難しさを痛感した。
ガーデンのデザインは、菜園スペースとコンクリートの作業場スペースを分けるなどの基盤は角野氏が設計したが、それ以外はベトナム人達が自由に形作っている。ベトナム人が料理で良く利用するハーブ(パクチー、レモングラスなど)やへちま、唐辛子を育てている。
多文化共生ガーデンと故郷の畑の雰囲気が似ている、と利用者が言っていたことが印象的だった。

◯線
開設当初、ベトナム人が大勢で作業する光景を残念ながら好ましく思わない近隣住民もいた。そこで、必ず挨拶することと、収穫したものをお裾分けすることを徹底してもらうことで、徐々に良好な関係が築けるようになっている。毎年、利用者が近隣住民宅へ大根サンタをイベントで行っており、近隣住民は毎年楽しみにしている。
ベトナム人は日本人よりもその場にあるものを利用する知恵に長けており、港湾に捨てられていたパイプなどを利用してパーゴラを造っている。
多文化共生ガーデンの向いに空き家があり、借りてガーデンで収穫したハーブを用いたベトナム料理を提供するカフェを開業させる構想はあるが、所有者の理解が得られない現状にある。

◯面
開設当初から、多文化・多言語コミュニティー局「FMわぃわぃ」プロデューサーの金千秋さんが関わっていることや、FMわぃわぃの拠点であるカトリックたかとり教会の信徒さんとの繋がっているため、イベント開催の際に大勢の方に参加してもらえるプラットフォームが確立されている。
また今回参加した「復興まち歩き」では、多文化共生ガーデン以外にも防災空地、アーティストの交流のための古民家再生物件を巡った。震災復興というキーワードでネットワークが形成されつつある。

概要

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