DIARY
”春は憂鬱”――よくそんな言葉を目にします。
私もそう思います。
別れと出会い。何かが終わり、また始まっていく。
漠然とした恐怖や不安、変化に乱される心。
新たな環境でどうにか上手くやっていきたい。
そういった無意識に生じる感情に、私たちは疲れてしまうのかもしれません。
これが ”憂鬱” の正体なのだと思う、今日この頃です。
それでも春は、緑が芽吹き、冷たく突き刺さってくる風が和らいで、世界が淡く色づいてくる季節でもあります。そんな小さな変化に意識を向けるだけでちょっと心が軽くなる。
「心とは、こんなにも単純なものか」と思わせてくれる、不思議な季節です。
信級(のぶしな)でも春の始まりを告げるように、慌ただしい日々が始まってきました。
前置きが長くなりましたが、今回の記事では春の仕事を象徴する「米作りの始まり」について、修士二年の伊藤がお話します。
稲作において、用水路の掃除が重要なことは想像に難くないと思います。
信級では、同じ水源を南北に長く伸びる田んぼ一帯で共有しているため、水路の詰まりは禁物です。
毎年4月末の朝、みんなで集まって一斉に掃除をする行事が行われます。
とはいえ、その前には水路周辺の草を刈ったり、燃やしたり。
それでも草はすぐ生えてくるので、定期的な管理が欠かせません。
今回の掃除も、そうした前準備が整った状態で私たちが参加するという形でした。
つまり、一回の行事だけを切り取って「管理している」とは言えない。
集落の営みとは、目に見える行事ではなく、その裏にある途方もない地続きの日常によって成り立っているのだと改めて感じました。
そうした「実感」を得られることも含めて、私たちが集落の行事に参加することの意味は大きいものだと思います。

身をかがめて用水路のお掃除
芽出しとは、種もみ(お米の種)からあらかじめ芽を出させる作業のことです。
乾燥した状態の種もみは、そのままではすぐに発芽しないため、「浸種(しんしゅ)」で十分に水分を吸収させ、適度な温度をかけることで、発芽を促します。
この工程を播種(はしゅ:種まき)の前に行うことで、その後の生育が揃うため、管理もしやすくなるそうです。病気への強さや、お米の味にも影響するのだとか。
お米の品種によって設定温度や時間が異なりますが、コシヒカリの場合、「積算温度100℃」になるように1日あたり10℃~15℃ほどで管理し、およそ1週間かけて調整するそうです。
仕上げに「催芽(さいが)」という、ぬるま湯に半日~1日つけて、1mm程度目が出た状態にする作業を行います。発芽しすぎるのもその後の工程に影響するそうで、タイミングが命な作業になります。
…とここまで得意げに話しましたが、これらすべて見聞きしたり調べたりした情報で、今回はこの後の工程の「種まき」からの参加でした。
しかし、種まきの楽しさの裏側にこうした緻密な準備があることを知り、米作りの奥深さを痛感しました。
次にこの作業をするときは、また違う心意気で挑めるはずです。

種から発芽させるための催芽機
催芽を終えたら種を乾かします。この日は天気に恵まれ、絶好の天日干し日和でした🌞

種の天日干し
そして満を持して登場したのが「赤い相棒」種まき機です。
どうでしょう、このビジュアル。なかなかワクワクさせてくれませんか?

種まき機
画面右側に積まれているパレットをレールに転がして、右のじょうごから「土」を、隣から「種」を、最後にまた「土」を被せます。つまりパレットの中に「土→種→土」のミルフィーユをつくるわけです。
一気に流れ作業が進む画期的な道具なのですが、最初に土と種の出る量を調整するのに苦戦して一時間かかりました💦
それからは単純作業で、工場のレール作業員になった気分です。
それでも人手が必要な作業なので、家族やご近所さんと一緒にわちゃわちゃと賑やかに行うのが一般的なようです。
この風景が本当に素敵でした。思わずたくさんスマホのシャッターを切っていました。

量の調整に苦戦する一同(手前)軽トラの荷台の木陰で戯れる2人(奥)

こうした営みの風景を目の前にしたときに、言葉にできないほど心が動かされる瞬間があります。
ただ単純に楽しいというのとも少し違う。複数人が一つのことに真剣に向き合う姿、試行錯誤を繰り返す様子、それを経て上手く作業が噛み合い、リズムが生まれてくる高揚感――。
今回の作業に関わらず、「ものづくり」や「場づくり」などのあらゆる場面に生じる、共同作業ならではの醍醐味だと思います。今回の体験は、その面白さを再確認させてくれる、とても印象深い経験になりました。
最後にビニールハウスに並べて水やりをして、無事に種まき作業完了!1日、本当にお疲れ様でした!
ここまで読んでくれてありがとうございました。
信級に関わり始めて1年、これまでも多くの経験をさせてもらいましたが、2年目もまた新たな経験を積み重ねることができそうな、良きスタートでした。
信級すみずみLab.の活動は建物の改修がメインではありますが、こうした地域に根差した営みに触れられることも大きな魅力の一つです。
勿論体力的にはハードな面もありますが、一日中パソコンに向き合う生活の中では、リフレッシュの場にもなっています。
体を動かして、肌で感じて、”春の憂鬱”を忘れてしまうくらい尊い瞬間を過ごせます。
今年も気合いを入れつつ、心は緩やかに米作りも改修も頑張っていきましょう!
ではまた